羊の反芻

羊は毎日夢の中に生きています。

 

身体は現実世界からは完全に切り離されて、

この世の全てのものから逃げ出し、

巨大な群れからも取り残されてひとり、

ひどく寒く、青く、黒く、白く、何もない宇宙を浮遊しながら、

ただひたすら思考という名の暖かいオレンジ色の雲を食べ続けています。

 

そうしなければ生きてはいけないから。

本能のままに貪る。

なぜ生きなければいけないのか、

その意味すら分からないままに。

 

そんな脆弱な一匹の羊が食べた無数の雲は

全て巨大で虚ろな反芻胃に格納され、

ふとした時に吐き戻してはまた飲み込まれ、

長い長い時間をかけて消化されていくのです。

 

そんな羊の食べた雲の一部を押し花にして

ここ残しておきましょう。